ファッション診断の結果は本当なのか

世の中にはいろいろなファッション診断がありますね。例えば「パーソナルカラー診断」。いろいろな流派がありますが※、馴染み深いのは、色を「春」「夏」「秋」「冬」の4つのグループに分類して、その方にとって最もお顔映りの良い色のグループがどれなのかを提案するものだと思います。

最近は「骨格診断」も人気ですね。こちらもアドバイザーによってバリエーションがあるかとは思いますが、骨格や筋肉のつき方などから判断して、「ウェーブ」「ナチュラル」「ストレート」の3つのファッションスタイルのどれが似合うかを提案するものです。

私たちが開発した「テイスト診断」では、分類の数が22タイプもあるのですが、基本的にはこの中からひとつのテイストを選ばせていただいています。こうしたファッション診断の多くは、クライアントを「あなたはこのタイプ」と判断することがスタートになっていると思います。

※パーソナルカラー分析にはいろいろなスタイルがありますが、私たちは、イエローベース/ブルーベース、清色/濁色、明/暗を元に顔の見え方を分析するという考え方を採用しています。「春」「夏」「秋」「冬」という4分類は1980年代にアメリカから日本へ伝わった考え方で、日本のパーソナルカラーはこれを元に進化・発展してきました。現在では新たに、8分類、16分類、24分類など、様々なアイディアが出されています。

では、「パーソナルカラー診断を受けて “春” だと言われた」「骨格診断を受けて “ウェーブ” だと言われた」「テイスト診断を受けて “エレガントゴージャス” だと言われた」として、それで悩みはすべて解決、と言えるのでしょうか。

サービスを提供する側としては、これで悩みが一気に解消、というほうがウケがよいですから、そう言い切ってしまいたいわけです。実際、服を着るときの違和感がなくなって服選びに自信がつき、買い物も迷わず、無駄なものを買わなくなったからタンスの中もすっきり、毎日の服選びが楽になってファッションが楽しくなった、他人からの印象も良くなって人生が好転、本当にありがとう!となる場合も、もちろんたくさんあると思います。ところがそうならない場合も当然あるわけで、むしろより深い混迷の中に沈んでしまう方もいらっしゃいます。

例えば、こういう方がいらっしゃいます。

ケース1
今回はパーソナルカラーが「夏」と診断されたけれど、実は以前違うところで診断を受けたときには「春」と言われた。「夏」はブルーベースで濁色。「春」はイエローベースで清色。正反対に思えるのですが。どちらが正しいのでしょうか?

ケース2
この前行ったサロンでは、パーソナルカラーが 「春」だと言われた。「春」が似合うということは、明るくて色鮮やかな色が似合うということだ。なのに、今日受けたテイスト診断では「エレガントゴージャス」と診断され、派手な色より落ち着いた色のほうがよいと言われた。私はいったい、どうすればよいのでしょうか。

ファッション診断を受けたことのある方で、同じような経験がある方はいらっしゃいますか?ファッションアドバイスの仕事をしている方ならば、こうしたケースはおそらく経験があることでしょう。よくあることなのです。誰もが知っているように、人間というのは多面的で多様ですから、似合う・似合わないという話は簡単にはいかないわけです。だからこそ、悩む人も多いわけですね。

そもそもメソッドというのは、こうした複雑な事情を単純化して理解するためのものです。個別具体的なことを一気にたくさん言われても、普通は覚えきれませんよね。たくさんの情報を自分のものとして使いこなすには、きちんと整理して、物事と物事のつながりを捉えていくことが大事です。

例えば、歴史の勉強をするときに、年表をまるごと覚えるのは大変です(試験前にがんばって一夜漬けした苦労を思い出す方はいらっしゃいますか…?)。それよりも、「この事件はなぜ起こったのか」「背景には何があったのか」を考えて、全体をひとつの大きなストーリーとして捉えることができれば、たくさんのことを無理なく覚えられるわけです。ファッション診断のメソッドも、基本はそれと同じことなのです。

つまり、診断を受ける側も頭を使う必要があるということです。それをきちんと伝えるのもプロの仕事のうちのひとつなのですが、限られた時間の中ではなかなか難しいことです。おそらくみなさん悩まれているポイントなのではないでしょうか。このあたりのことは、経験を積まないと、必要性自体認識できないものかもしれません。

診断の結果は、前提となる知識体系とともに理解したほうが絶対に有利です。ケース1もケース2も、背景に体系的な知識を持っている人ならば、何が起こったのかが簡単にわかるでしょう。

ケース1は、パーソナルカラーが「夏」と「春」のどちらなのかわからなくて混乱してしまった例です。「夏」はブルーベースで濁色。「春」はイエローベースで清色。正反対のグループなのに、なぜこうなるの?と、なってしまっているわけですが、実は「春」も「夏」も明るい色の多いグループなんですよね。共通点はしっかりあります。ですから、この方は「明るい色であることが第一条件の人」なのではないかという想像ができます。

そして、「ブルーベースで濁色」と「イエローベースで清色」にも、しっかり共通点は見いだせます。「スッキリ感」です。スッキリ感を感じさせる要素は、「ブルーベース」あるいは「清色」です。つまり、「夏」と「春」の違いは、ブルーベースでスッキリ感を出すか、清色でスッキリ感を出すかという違いだと捉えることもできるわけです。

もしかしたらこの方は、「冬」の中でも明るい色ならばよいのかもしれません。「冬」は「ブルーベースで清色」ですから、ダブルでスッキリするわけです。あるいは、そこまでスッキリ感が強いとよくないのかもしれません。

ケース2は、「お顔映りが良い色」と「当てはまるテイストの典型的な色」が一致していないケースです。一致していない、と言うと珍しいことのようですが、これは非常によく見るケースです。というより、ぴったり一致している人のほうが少ないくらいでしょう。わかりやすい方はそもそも悩みませんので、ファッションアドバイザーの仕事とは、こうした不一致に対応することがメインになってくるかもしれません。

「エレガントゴージャス」というテイストは、「静的」な座標に位置します。色で言えば中〜低彩度です。こういう方が、パーソナルカラーが「春」だからと言って何も考えずに鮮やかな色のスーツを着てしまうと、ちぐはぐな印象になります。多くの場合、派手すぎて品がなく見えるのです。「静的」な座標位置の方が鮮やかな色を着るときには、良くない印象を回避するためのテクニックを使います。この場合はおそらく、最も大きく影響するのが素材感です。

これはテイスト診断の細かい話になってくるので詳しくは別に書きたいと思いますが、要は、自分のテイストに一致するように「色」「柄」「形」「素材」などのバランスをとっていくのです。

逆に、中〜低彩度の色を選びつつ、「春」の色の特徴である「明るさ」「清色感」の効果を感じさせることも可能です。実は、テクスチャーを工夫すれば、パーソナルカラー以外の色を着てもお顔映りを犠牲にしなくてすむことがあるのです。こうしたパーソナルカラーとテイストの不一致も、知識の体系化がしっかりできていれば、戸惑うことなく応用方法を発見していくことができます。

ファッション診断を受ける方には、診断の結果をタイプで把握するだけでなく、ぜひ体系化した知識とともに理解していただきたい思います。そうなれば、いちいちアドバイザーに聞かなくても、すべての問題は自分で解決できます。そのほうがきっと楽しいし、自分を深く知る機会にもなっていくのではないでしょうか。

ファッションは、洋服を作る人だけでなく、洋服を着る人にとっても、とても創造的な営みだと思っています。ファッション診断が、自分をよく知り表現する方法を創り上げていく、そんな第一歩になれればと願っています。